ぐい呑み作品集-Gallely
ぐい呑み春夏秋冬
ぐい呑みとは特別名ではなくて、自在に酒盃と見立てられるものの総称だと思います。
自分の好みで、春夏秋冬に調和するひと揃えは欲しいものです。
正月には朱杯や須恵器が似合うであろうし、また金欄手も華やかで晴着の女性をみるようですね。
唐津では朝鮮唐津のぐい呑みなど良いですね。
夏は染付が涼しくて良いようです。
染付にも上手もの、下手ものとありますが、古伊万里のように涼し気でかれんな姿はうれしい酒になります。
桃山とまではいかないまでも、江戸から明治にかけて、有田はじめ各地で造られた猪口の種類は多く見られます。
唐津では青唐津か黒唐津ですね。
秋は白磁や朝鮮の粉引、粉青沙器の盃も良いですね。または刷毛目など。唐津では三島唐津になりますがやはり皮鯨ですね。月見の席にはあいそうです。
冬は備前、信楽と土ものの重厚な肌がぬくもりを伝えてくれます。
唐津では、備前唐津というのもどうでしょうか。
春は赤絵などの絵付が楽しいですね。
唐津ではやはり絵唐津でしょうか。
ぐい呑みについて
酒呑みにとってぐい呑みなどの酒器については真っ先に斟酌すべきものではないようです。
肝心なのはその中身のほうですね。
時と場合によっては一升瓶と飯茶碗でもいいようです。
むしろその方がいいときもあります。
さりとてよい器で呑めば、酒はまた格別となるのも事実だと思います。
器に思いを巡らすと、素材だけでも土や石、木竹、漆、ガラス、金属など、素材も、その形態も多種多様です。
飯茶碗ではありませんが、他の器から転用されて酒器となったものもあるようです。
江戸時代中期の和え物などを盛る向付をぐい呑みに見立てたものもあるようです。
陶芸家のぐい呑み-陶工のぐい呑み
陶芸家がぐい呑みを積極的に手がけるようになったのはそう古いことではなく、昭和50年代になってからのことだそうです。
ぐい呑みの登場した時期が、地方酒造メーカーが高品質の地酒を作り始めた時期と重なりるのは偶然ではない気がします。
料理を中心としていた酒席が、酒そのものを楽しむ場へと変わっていった時代ですね。
吟醸酒に代表される高品質酒の登場で、酒は「冷酒」でも美味いことが広まっていきました。
呑み方の変化に呼応して登場した酒器が片口ですね。
茶の湯ではお馴染みでも、日常では酒や醤油を小瓶などに移し替える裏方に過ぎなかったこの器が、新たに脚光を浴びるようになった理由には、大振りなぐい呑みに似合う容器が求められたこともありますが、
何よりも酒そのものが美味く見え、酒の香りも愉しめるというのだいい気な要因ではないかと思います。
片口を茶碗に見立てて使えるのは唐津の茶碗だけで、他の焼では茶碗として認められなかったといいます。それくらい唐津の片口とは有名です。
唐津の片口は、他の地方の片口と違って、注ぎ口の上が閉じています。
ぐい呑みにしろ片口にしろ、使い手からの要望によって新たな命を得た器ではありますが、愛好家は実用性のみを求めているわけではないようです。
作家は使い勝手のよさだけを考えて作品を作っているのではないし、多くのコレクターが、使いやすさよりも自分の好みに合ったものを使うといっています。
徳利や片口なら酒のきれ具合になります。
これは、一番先のとがっている部分が薄くてとがっているもの切れが良いようです。
特に唐津の片口を選ぶときは土もので釉薬もかかっているので厚くなりがちですが、実際についで確かめられればいいのですが、確かめられないときは、口が薄いものが間違いはないみたいです。
ぐい呑みは唇に当たるときの触感、□当たりがとても大事ですね。
これは人によって好みが違うものですが、当てたときに違和感があると嫌なものです。
上唇で酒を切るのと下唇でぐい呑みの厚みを感じ取るようです。
唐津のぐい呑みを選ぶときは、口造りを見てください。
なるべく胴回りより厚いもので先が幾分とがっているものが切れが良くて口当たりも良いようです。
唐津には皮鯨というものがあるのですが、「皮鯨」とは、無地唐津の口縁に鉄釉をぐるりと塗った手の総称で、なんでも鯨の皮と脂肪の境に見立てたもので皮鯨の名があるようです。大酒のみを鯨呑みと称することからもこのように呼ばれることもあるそうですが、唐津の土は砂分が多くてざらざらしているので、口造り部が欠けやすく、そのために口部に補強と口当たりを柔らかくするのためにつけたともいわれています。
酒に限らず土ものを扱う基本は、使う前に、熱湯か水に浸して、あらかじめ生地に水分を充分含ませてから使うと、シミなどがつきにくなります。
信楽や備前、唐津の焼き締め(備前唐津)などは、特にそのまま使うと臭いも付きやすいので、一晩水につけて充分水を含ませておくと臭いが付かないだけでなく、焼き肌も美しくなります。
使用後は時間を置かずに水に浸すことも大切です。
長時間浸したままにしておくと、カビ・シミや臭いが発生するもとになりますので、1時間程度にしておく方が無難です。
お湯か水でよく洗ったあとは風通しのよいところにおいて自然乾燥させます。
お湯のほうが汚れがよく落ちるますが、酒なら水で充分です。
ぐい呑みは、全部飲み干さずに少しとっておいて、手のひらの中ですこし育ててあげるといいですね。
完全に乾かすためには、器種や湿度にもよりますが3日から1週間ぐらいは必要です。
徳利など□の小さいものは逆さまにしてよく水きりをすることはいうまでもありません。
美味い酒を手に入れたて、久々に箱から出した唐津のぐい呑み。
底に何やら緑色の粒々が見えます。
カビです。
こうして万がいちカビが生えてしまったときはどうすればいいでしょうか。
変色していたり、臭いがするというようなことになったら、作家ものの場合はその作家にお願いして素焼きの窯で焼いてもらうのが一番です。
800度の高温で焼けばカビもひとたまりもありません。
素焼きですので、釉薬の変化もありません。
ほぼ元の状態に戻ります。
その代わり、育ったところも貫入以外は元に戻るので最初から育てなくてはならないようです。
志野や萩や唐津は購入して実際に使うときも注意が必要です。
一般的に磁器類はそれほど気を使う必要はありませんが、土ものを使う際には、どういう土を使っているか理解して扱わなければなりません。
「萩、唐津、志野、とくに萩と志野は密度の粗い土を使っており、その柔らかさが好まれているわけです。唐津も窯、作家によって使う土が砂目の多い荒い土を使っている場合は、絵唐津など低い温度で焼成しているものも注意が必要です。
柔らかい分だけ浸みやすいので、お酒の成分が残っていると、雑菌、カビなどが繁殖しやすくなります。
萩など特にカビやすい土ものです。
萩の七化けと言われるように、よく変化するのはそのためだと思います。
雨漏りとかその雰囲気が茶人に愛でられています。
使い始めが特に変化しやすいようです。
長年使ったものはあまり神経を使わなくてもいいのですが、新しいものを使い始めるときは雑菌が生えやすい状態ですので注意が必要です。
萩の場合は割と柔らかく焼きますので、浸みることがよくあります。
萩はこの浸みていくのも楽しみのうちなんですが、雨漏り手といいますが、最近の作品には味を出すために、焼成温度を低くして焼き締まらないようにしているものも見受けられます。
このようなやきものは、使っていてもなかなか止まりませんから、ふのりを使うのもいいかもしれません。ふのりを鍋で煮た中に一晩おき、翌日よくすすぎます。
ふのりの細かい成分が土の問に入り込んで漏れを止めてくれます」
ぐい呑みをはじめ酒器は、数を集めても場所を取らず、作家の特徴もよく出ているので、”やきもの”ファンになる一つの近道です。
晩酌のお供に唐津の梅花皮(かいらぎ)のぐい呑みなど一つ如何ですか。
名器といわれるもので良い酒を飲む、酒好きの至福の時
「酒器はやはり酒飲みでないといいものは作れませんね。」
などと言われると「では期待にお応えして」と妙な力が入ったりするようです。
いろんな酒は、いろんな器で飲みます。
麦酒を呑むのはグラスに限るとよくいわれます。
酒も冷酒は薄手の青白磁などのほうがいいと思います。
徳利は備前に常温か、爛をした酒が合うと思います。
それでも、ぐい呑みはやはり、唐津ですね。
昔からよく言われている言葉に、
「いくら酒好きでも徳利がからになってしまうまで飲むな。
最後の何滴かは徳利に、ぐいのみにとっておいてやれ」
というのがあります。
残った何滴かの酒を手のひらに受け、それで徳利、ぐい呑をなでてやれというのです。
こうして使っていると酒器はだんだんとその表情を変えていきます。
こうするとぐい呑みが育っていくのですね。
これも酒好き、酒器好きの楽しみの一つです。
名器といわれるもので良い酒を飲む、酒好きの至福の時ですね。
今日は、唐津皮鯨でいきますか。