唐津のぐい呑みの魅力(2)
唐津のぐい呑みは「用の美」陶工8分、使い手2分
「陶工」という言葉があります。
「作家」でなく、「陶工」。
作家という言葉はなぜか偉そうな響きがあって堅苦しいです。
一方の陶工は誰におもねることなく、偉ぶることなく、
例えばぐい呑みを作る人という、ただ、その事実だけの言葉です。
当たり前と言えば当たり前のことなのですが、「陶工」いい響きです。
唐津の良さは「用の美」と言われています。
ぐい呑みには陶工がいて、使い手がいます。
その両方があってのぐい呑みなのです。
陶工は日ごろから土と親しみ、身体を使ってぐい呑みを作ります。
それを受け取り、生かすのが使い手の役割です。
ぐい呑みは酒を呑む器であるので、日々の食卓にのぼりかどうかはわかりませんが、
日々使い使われていくことこそ「唐津のぐい呑み」の生きる道だと思います。
「陶工は8分、育てるのは使い手で2分」と昔から言われてきています。
ぐい呑みを完成させるのは、「使い手」なのです。
最近は「用の美」を忘れている”やきもの”が多すぎるような気がします。
芸術という名の下に「使われない・使わない・陶芸」が氾濫しています。
「用の美」という、使う人と作り手が共に育てていかなければいけないような気がします。
唐津のぐい呑みは感性で選ぶ
よい、ぐい呑みを選ぶときのこつは、「素直に見る」ということにつきます。
できる限り、ひとりで多くの陶器店、展示場、ギャラリーに足を運び、たくさんのぐい呑みを見ることをお勧めします。
気心の知れた友人とぐい呑みを選ぶこともまた愉しいものですが、たまには、心を平らかにし、静かにぐい呑みと向きあってみてください。
心が、ぎわめいていると、ぐい呑みから語りかけている声を聞き逃してしまいます。
それは「陶工」にとってもとても残念なことです。
黙って感じることが「素直に見る」と言うことになると思います。
独りの時間のなかで、人は自分の心の中の奥に入り込んで、自分の感性と出会います。
向き合うとは自分自身と対峙することだと思います。
ぐい呑みを感じるとは、「陶工」と向かいあうことだと思うのです。
「陶工」の息づかい、目指そうとしたものをくみ取ってください。
ぐい呑みの奥にあるものを見てください。
「陶工」と自分と、ぐい呑みという「モノ」を通じて感性を磨いてください。
たくさんの「モノ」を見て、触れて、感じて、その中で自分の感性と呼応したものを手にとって下さい。
しかし、感性も変化します。
ぐい呑みを選ぶ基準も変化していきますので、ぐい呑みの数も増えてきます。
唐津のぐい呑みに限らず日本中にはたくさんのぐい呑みがあります。
陶工の感性を感じ取って世界中のぐい呑みをたくさん集めて、自分の感性の変化を楽しんでください。
不器用なぐい呑み
「陶工」も一人の人間ですので、ある特有の雰囲気や匂いを感ることがあると思います。
人はとても弱い生き物なのでどうしようもないものができることがあります。
そんな陶工が作るのだから、人間が作るものなのだから、どうしようもないということが受け入れられ、人の心に響くのではないでしょうか。
器用なぐい呑みより不器用なぐい呑みが世の中に受け入れられているのは、人間性が表れているからだと思います。
不細工だけど何か感じる。
不器用だからこそ愛おしい。
唐津のぐい呑みの中にも不器用なぐい呑みがたくさんあります。
あばたもえくぼになることもあります。
そんな不器用なぐい呑み達を昔から「ひょげもの」「ひょうげもの」として愛でてきた日本人の感性を大切にしたいと思います。
なんでもないと思う「ぐいのみ」
不思議な言い方ですが、今、「なんでもないものがいい」と思っています。
「口が尖っているな」とか、「形がいびつだな」、もっと積極的には「きれいな色だな」など……。
そういうことを感じずに、ただ素直に手が伸びるものがよいと思っています。
酒を呑む。その用途にかない、使い心地に満足し、そのぐい呑みの存在すら消えて人の手に馴染んでいく。
そういうものがいいと思っています。
作品集(ギャラリー・Gallery) はぐい呑みと人の出合いの場であってほしいと願っているが、一方で、出合いとは何気なくシンプルであることが一番望ましいのではないかと考えることがあります。
「ぐい呑みは酒飲みのそばにあるもの、使う人のそばにあって欲しい」という想いでこのサイト「唐津ぐい呑み」を作りました。
画像でしか伝えられないのが残念なのですが、サイトを訪れた方に励まされるのは、「いろんなサイトを巡っているうちに、ぐい呑みと出合ってしまった。」といってくれる人や「何かわからないけれど雰囲気がいいから使ってみたい」という、ぐい呑みとの偶然の出合いを幸せに感じる人の言葉です。
「なんでもなくて、偉ぶらない。人のそばにいて人を和ませる」
唐津のぐい呑みを伝えるうえで辿り着いた、ささやかな、そしてずっと大切にしたい言葉です。
そんな、雰囲気が少しでも伝わっていればいいなと思います。
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